第53回 川内市医師会医学会(H12年11月15日)
 当院における『めまい症例』についての検討

当院における「めまい症例」の検討
                     せんだい耳鼻咽喉科   内薗明裕
 
T.はじめに、
 いわゆる「めまい」を主訴に来院する患者は、実際には数多くの疾患に分類される。 この2年間に、「めまい」を訴えて当院を受診した患者について以下の点について検討し、今後の診療の一助にすることが今報告の目的である。
 @めまいの性質について、A随伴症状について、B診断について、C治療について、
D転帰について
U.検討の対象・患者背景
 平成10年6月から平成12年5月の2年間にいわゆる「めまい」を主訴として受診した患者、男性19名、女性65名、計84名について検討した。年齢は、10歳から78歳まで、多岐にわたり、最も多かったのは、60歳代であった。又、各年代共に、女性が圧倒的に男性を上回っていた。とりわけ、60代の女性が多かった(図1)。
 受診までの罹病期間を検討してみると、発症後、1週間以内が27%、1ヶ月以内が 36%で、1ヶ月までに全体の60%強が受診していたものの、1年以上を経過してから受診したものも、33%を占めた(図2)。
 これに関連して、前医の有無を調べてみると、全体の7割がいずれかの医療機関を既に受診していた(図3)。
V.めまいの性質・随伴症状
 めまいの性質が回転性か非回転性かを比較すると、全体の65%が回転性めまいを訴えていた。頭位によるか否かについての比較では、約4割が頭位性のめまいであり、6割は自発性と訴えた。また、めまいが反復しているかどうかの比較では、全体の45%が反復性と訴えていた(図4)。
 めまいに伴う他の症状について検討した。めまいに伴う難聴を呈した症例は全体の40%であった。耳鳴を訴えた症例は、約5割を占めた。頭痛や頭重感を訴えたものは、37%であった。自律神経症状としての嘔気・嘔吐・冷汗は、かなり多く認められ、全体の 65%の患者が訴えた。しかしながら、中枢神経症状と考えられる顔面や手足のしびれ感の訴えはわずかに1例とほとんど認められなかった(図5)。
 合併症としての高血圧症は、全体の19%に見られたのみであった(図6)。
W.診断の分類
 耳鼻咽喉科的診察、聴力検査並びに、平衡機能検査をおこなって、得られた診断名は、良性発作性頭位眩暈が33%と最も多く、ついで、起立性調節障害23%、メニエール病10%、その他のめまい34%であった(図7)。その他のめまいには、前庭神経炎、突発性難聴、良性反復性めまい(前庭型メニエール病)、薬物中毒などが含まれているが、大部分は分類不能のめまい症例であった(図8)。
X.治療法・転帰
 当院でのめまいに対する治療法は、発作後1週間以内には、急性期と考えて、安静を第一として、主に、自律神経症状を取り除く対症療法をおこなう。1週間以上を経過した症例では基本的に安静をとらせずに、積極的な平衡機能訓練を指導している。
 検討した症例におこなった治療法をまとめてみると、薬物療法が50%と最も多く、理学療法15%、薬剤と理学療法の併用が8%であった。特別な治療を施さず、日常生活の注意や指導をおこなっただけのものが27%であった(図9)。
 治療後の転帰については、治癒5%、軽快37%、説明のみで終わった症例が30%、患者の都合でその後受診しなかったものが10%、現在治療中が8%、他医へ紹介したものが10%であった(図10)。
Y.考察・まとめ
 患者の訴えるいわゆる「めまい」には、実に様々の疾患が隠れており、これを適切に診断することは容易ではない。一般的に、激しい回転性めまいをはじめて経験した患者は、その症状の激しさから重症な疾患であるとの不安を抱くと思われる。一般の人に回転性めまいの大部分が内耳性の疾患が原因であるとの認識は乏しく、たいていの場合、内科や脳神経外科を受診し、最初から耳鼻咽喉科を受診するケースは少ない。実に70%の患者が前医の診療の既往を有していることがそれを物語っている。しかも、かなりの患者が「メニエール病」との診断名を言い渡されていることが多い。めまいの性状や神経学的検査、平衡機能検査を的確におこない、正確な診断を下すことは大変重要である。今回の検討では、メニエール病と確認できたのは全体の10%に過ぎず、従来の報告に見られるように、めまい全体から見てもそれほど多いとは言えない。また、これも、従来の報告にあるように良性発作性頭位眩暈が33%と最も多かった。
 特徴的なことは、「めまい」受診患者の背景で、60歳代の女性が多いことであった。
この年齢はいわゆる更年期に相当しており、更年期における自律神経バランスの不調和とめまいとの関連が示唆された。また、10代でも「めまい」を訴えて来院するケースが増えており、これらのほとんどは起立性調節障害であった。起立性調節障害の割合が多くなったのもこの事情によると思われる。
 めまいの性質は、回転性か非回転性か、頭位性か自発性か、反復性か否かの判断が重要になるが、全体の65%が回転性めまいを訴えた。
 又、随伴症状では、嘔気嘔吐などの自律神経症状が最も多く、これが患者の不安を募らせる要因になっているようだ。難聴を呈した患者は40%であり、めまい患者の約4割は少なくとも何らかの内耳、中耳病変が関与していることが推察された。
 治療法のなかで特筆すべきは、良性発作性頭位眩暈に対する理学療法の効果である。
病態の理解が進むと共に、エプリー法やレンペルト法、セモン法などの顆粒置換法が一般的な第一選択療法になってきている。その効果も高く評価されており、今後更に一般的になっていくべきであると思われる。
 さらには、めまいの再発予防には、日常生活の改善が重要であり、その指導がきちんとなされるべきであろう(表1)。
 以上、当院をいわゆる「めまい」を主訴として受診した患者について検討した結果、下記のようなことがわかった。
 《まとめ》
 1.中高年女性の受診が多かった。
 2.受診者の70%に前医の受診歴があった。
 3.65%が回転性めまいを訴えた。
 4.65%に自律神経症状の随伴が認められた。
 5.高血圧を有する患者は19%に過ぎなかった。
 6.良性発作性頭位眩暈(BPPV)が最も多かった。
 7.BPPVに対する理学療法の今後の発展が期待された。

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